台風で飛んでいった物が与えた損害の責任は?
台風による被害が毎年ニュースで流れています。
雨による増水なども危険で、土砂崩れなども心配ではありますが、
強風の被害はより身近なもの。
今回の話題は「台風で家のものが飛んでいき、他人の物を壊したら、責任を負う必要はあるか」
についてです。
未曾有の台風後、あるアパートの出来事
ある賃貸アパートで、強風により看板がはずれ、駐車場に停めてあった入居者さんの車に傷がついてしまいました。
車の板金屋さんに見積もりを依頼し、数万円かかることになったのですが…。
アパートの所有者さんは建物に火災保険をかけており、
その保険には
「建物の管理不備に起因する偶然な事故により、他人にケガをさせたり、物を壊したりした場合の法律上の賠償費用を補償する」
という内容の補償の特約がついていました。
「アパートの設備が入居者に被害を与えた」という事故ですから、これが適応になるかもしれない。
ということで保険会社に事故報告の連絡をいれたのですが、
確認の結果、今回の事故では保険の支払い対象にならない、ということになったのです。
「不可抗力」は「賠償」の対象にはなりません
どうして保険の対象にならなかったのでしょうか。
それは、補償が「法律上の賠償費用を補償する」という内容だったからです。
今回のケースですが、
建物の付属物は、毎年きちんと点検を行い、容易にははずれたり倒れたりすることはない状態になっていました。
また、近隣でも、街路樹が根元から倒れるような事故が多発しており、今回の台風が「未曽有の強風」であったことを、保険会社さんは把握していました。
管理不備があったとは言えない状況であり、
台風の風が非常に強力だったために起きた事故で、
「不可抗力であり、設置した人の責任ではない」と判断されたということです。
責任がなければ、法律上の賠償費用は発生しない、ということになります。
そのため、支払いの対象外ということになったのです。
損害を受けた側で、保険で対応しましょう!
ということで、「法律上責任が無い」のですから、壊れたものの修理費用などは負担しなくていい、ということになります。
車であれば車両保険などを所有者の方がかけていたりしますから、
そちらで対応していただく、というのが保険会社的な考え方です。
壊れたのが自分の物なら、「賠償」ではなく通常の「風災の被害」で対象になります。
不可抗力なんだから、被害を受けた本人がかけている保険で対応しよう、ということですね。
が、実際には必ずしも保険に加入している人ばかりではありませんし、
アパート・マンションなどの収益物件や、店舗・事務所などは、周囲は「通常以上の管理」を求めてしまいがちではあります。
法的には不可抗力とはいっても納得がいかない方も多いでしょうし、
揉めてしまうケースもありますが、
お互い納得がいくよう、穏便に落ち着いて話したいですね。
予見できる災害には充分な備えを!
「不可抗力で賠償の対象にならない」案件、意外と身近なものです。
人間の備えを上回ってくるのが自然災害、どれだけ準備をしても時に予想もしない被害をもたらします。
可能な限りの災害への対策を行い、保険もかけてきちんと備える。
それでもどうしようもないときもありますが、「備えておいたからこそ、これだけの被害で済んだのだ」と考えましょう。
何もしていなければ、被害はもっと甚大だった、ということです。
絶対に何も起きない、なんてことはありませんから、少しでも安心できるよう、充分な備えをするようにしましょう!
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