賃貸契約、「良くない契約書」を作ってしまっていませんか?
賃貸オーナーの方々は、不動産屋に貸アパート・貸マンション・貸家などの仲介を依頼し、
「こういう内容を賃貸契約書に記載してほしい」と頼むことはよくあることかと思います。
しかし、言われた通りに書く会社が、必ずしも大家さんにとって良い会社ではありません。
例えば、「家賃を滞納したら鍵を変える」という内容の条項
例えば、あるアパートの大家さん。以前の入居者がひどい家賃滞納をしたことがありました。
なので、
「今度から、家賃を滞納したら部屋の鍵を変更して入居者が部屋に入れなくしてしまおう。契約書に書いて同意させれば問題ないはずだ」
と思い、不動産屋に、契約書にその内容を書くように言いました。
業者はわかりました、と契約書にその内容を記載し、
借主は契約書の説明を受けましたが、早く入居しないといけない都合もあって、深く考えずに契約してしまいました。
借主は何らかの事情で家賃を支払えなくなってしまい、大家さんは、契約書通りに鍵を変更しました。
借主さんは家に入れなくなってしまいます。
借主さんは、大家さんを訴えました。
裁判の結果、契約書にはきちんと書いてあるにも関わらず、借主さんの訴えが通りました。
家賃滞納があったからといって大家さんが勝手に鍵を変えたり、
部屋の中にある財産を差し押さえたり、というのは、
「自力救済」といって、やってはいけないことになっているのです。
法外な内容は、契約書に記載していても裁判では認められません
このほかにも、
「家賃の支払いがおくれたら、一日ごとに千円の損害金を支払うように書いてほしい」
「大家が明渡しを要請したら、一ヶ月以内に出ていくように書いてほしい」
といったようなお話を頂くこともあります。
家賃の遅延損害金は、契約書に金額や割合を記載していたとしても、
一般の居住用であれば「年14.6%」という上限が定められています。
(一日千円の損害金は、1ヶ月分の家賃に対してであれば、家賃が月250万円なら可能です)
大家さんが明渡しを要求する場合、「6ヶ月前~1年前に通知する」ように定められています。
契約書に書くだけなら、できないわけではありません。
しかし、実際にはいくら借主さんがその契約書にサインをしていたとしても、
法律を度外視したり、消費者に一方的に不利な内容の契約というのは、無効扱いになってしまいます。
契約書通りに実行する前に、まずは確認を。
法律などの決まりは、内容や解釈が変わったり、追加されたりします。
民法改正などの法律自体の変更はもちろんのこと、
慣習のようになっていたことが裁判によって「判例」「前例」が出来ることで、
これまでのようには通用しなくなる…ということも多いです。
何年か前に結んだ契約書は、現在では通用しない内容になっていることもあります。
なので、「今通用しない契約書」を以前作成した会社が、一概に問題があるというわけではありません。その当時は通用する内容だったのかもしれません。
今は通用する契約書も、数年後はどうなるかわかりません。
いざトラブルなどが発生した時に、古い契約書を信用して行動を起こしてしまうと、今の法では問題がある行いだった…ということもあるでしょう。
特に入居者さんに対し、契約書に基づいて「退去させる」「なんらかの費用を請求する」といった行為については、
まずは契約書通りにする前に、それが問題ないのかどうかを確認してみることが大切です。
今の時代は入居者、借主さん側も、自分達に不利にならないようにどんどん知識をつけています。
大家さん側も知識のアップデートが必要です。
契約書を作成する仲介業者の役割
全ての不動産会社が100%、とは言えないのが残念ではありますが、
不動産業者は常々、賃貸契約書のアップデートを行ったり、
最新の判例を気にかけたりしています。
「賃貸住宅標準契約書」は国土交通省が公開しており、誰でも利用することができますが、
これはあくまで国土交通省の作成した「標準」であるため、地域的な「標準」と一致しているわけではありません。
不動産会社は必要な事項をくわえたり変更したりして契約書を作成しています。
自力救済のような「書いても無効になってしまう」内容もある一方、
「標準契約書には無いけれど書いておけばちゃんと認められる」ものも多数存在しており、
そのあたりの判断、というのは一般の方には難しい部分も多いと思います。
我々不動産業者も日々、弁護士の先生方などに相談しつつの勉強です。
昨今はインターネットの発達もあり、不動産業者を挟まずに賃貸借契約を結ぶことも難しくはなくなりましたが、
入居後の大きなトラブルを極力減らすような契約書を、相談しながら作ってくれる、というのも、不動産会社の重要なポイントではないでしょうか。
また、古い契約書であっても「今はこの条項は無効になってしまう」ことを判断できる賃貸管理会社の利用も、
インターネットで気軽に消費者が情報を得られる現代においては、重要になってくるでしょう。
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