賃貸戸建、屋根からの落雪による被害は誰の責任?
今年の積雪はどんなものかと戦々恐々としながら毎年冬を迎えておりますが、
冬に起きる様々なトラブルのうち、積雪量が大きく関係してくるのが「落雪」の問題です。
貸家の屋根からの落雪、責任は誰に?
落雪で窓が割れた。
落雪でお隣さんの建物を傷つけた。通行人に怪我を負わせた。
冬になると起こりうる事故です。
つららなどでも発生することがあります。
もしこういった事故が起きてしまった場合、所有している住宅であれば、
もちろん、所有者の管理責任が問われることになります。
では、賃貸の一軒家の場合はどうなるのでしょうか?
何も取り決めがない場合はオーナーの責になる可能性が高い
アパートなどの集合住宅の場合は、通常、オーナーの責任になると考えられます。
入居者がアパートの屋根を管理するケースはあまり多くありません。
では、一戸建ての貸家の場合はどうなのか、というのが問題になります。
どうも調べてみる限りでは、明確な裁判になった事例というのもあまり無いようでして、
弁護士さんへの質問をしても、意見がバラけていました。
なので、実際訴訟問題などになった場合にどういう結果になるかは状況次第ではあると思いますが、
「契約に何の記載もなければ、オーナーに責がある」という考えが多めのようです。
契約書に、「屋根の雪下ろしは借主が行う」ということが書かれていれば入居者の責になり、記載がないなら、オーナーの責任、という考えです。
北国の賃貸オーナーさんは、雪下ろしは入居者さんにやってほしいなあ、という場合は契約書に書いておいたほうが良いですね。
入居者さんは、契約書によく目を通しておきましょう。
自分で雪を下ろす必要がなかったとしても、危険は伝えましょう
一方、「雪の降る地域であれば、雪下ろしは借主の善管注意義務の範疇ではないか」という考え方もあります。
善管注意義務は、簡単に言えば「ものを借りているからには、自分の物以上に注意して管理する義務があるよ」という意味合いの言葉です。
少し解説した記事もありますので、よろしければご覧ください↓
▶【善管注意義務って?】退去時お金を請求されないために、何に注意して暮らせばいいの?
一戸建て住宅の場合、庭なども入居者の管理の範疇に含まれることから、
庭の雑草除去などは入居者が負担する、除草をしないことで庭が原型を留めなくなってしまった場合は原状回復をする必要がある、
ということについては過去の裁判事例でも認められています。
同様に、「屋根の雪下ろしが当たり前に行われる地域であれば、雪下ろしは入居者の管理の範疇では?」という考えも、あるかと思います。
この考え方をしている弁護士さんも中にはいらっしゃいますし、状況によってはこの考えも認められるケースはあるかと思います。
ただ、参考例としてですが、
先の「庭の除草をしなかったので荒れた庭の原状回復」についてですが、
「適切な除草」は入居者さんの善管注意義務に含まれると判断されましたが、
「適切な管理や剪定をされずに枯れてしまった庭木」については、契約書に記載がなく、更に手入れに専門的な知識も要することから、
「剪定までは義務ではないが、庭の状況を気にかけ、状態が悪くなったことに気がついたら報告をする義務はあった」
というような判断をされています。
※国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」
◆ 第3章 原状回復にかかる判例の動向
庭付き一戸建て住宅につき、草取り及び松枯れについての善管注意義務違反があったとして、賃借人の費用負担を認めた事例
【東京簡易裁判所判決平 21.5.8】
(2)庭の植栽の剪定をしなかったことについては、敷地・庭の植栽の管理方法についての具体的な合意・約定がないこと、仲介業者から基本的には植栽は刈らないようにとの説明を受けていたこと、植栽の剪定・養生にはこれに関する一定の知識経験が必要と解されるが、賃借人Yらには知識経験はほとんどなかったこと等に照らせば、剪定をしなかったことを賃借人Yらの善管注意義務違反とみることはできない。
(4)松枯れについては、松枯れの原因は不明であるが、松の変化の状態に気付き、これを賃貸人Xに知らせて対応策を講じる機会を与えるべき義務があったと解するのが相当であり、これを怠った賃借人Yらには善管注意義務違反があったと認めるのが相当である。
雪下ろしが誰でも気軽に簡単にできるものか、というと疑問が残るところです。
このケースを踏まえると、契約書になにも記載がない場合は、
「雪を下ろさないと危険かもしれないと判断した時点でオーナーに報告する」
ことは義務となるでしょうが、下ろすこと自体まで義務と認められるか、というと難しいのではないでしょうか。
とはいえ、逆に言えば「報告」はしなければなりません。
オーナーさんは近隣に住んでいる方ばかりではありませんし、全てに完璧に目をくばれるわけでもありません。
日頃生活している入居者さんからの報告がなければ危険な状況に気がつけない方も多いです。
入居者さんが自分で雪を下ろせないからといって、なにも報告せずに放置していた場合には、事故への責任がある、ということですね。
どちらの責にもならないケースもあるかもしれません
他に考えられるパターンとして、
「どちらの責でもない」ということになる場合が、考えられます。
「災害」による被害、という扱いになるパターンですね。
普段雪の降らない地域で猛吹雪が発生したために起きた事故である、
などといった場合は不可抗力という扱いになるかもしれません。
雪下ろしは、毎年のように雪下ろし中の事故による被害が発生しており、
誰でも簡単にできる、というわけではありません。
ですから、一戸建ての住宅であっても「契約に何の記載もなければ、オーナーに責がある」という判断を支持される弁護士の方が多いのだと思います。
ちょっと難しいな、という場合は、オーナーさんにしても入居者さんにしても、専門の業者さんなどを頼まれるのが良いかと思います。
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