【善管注意義務って?】退去時お金を請求されないために、何に注意して暮らせばいいの?
賃貸住宅に暮らすにあたって、「どのくらい家のことを気にして暮らすべきなのか」。
その基準になるものが「善管注意義務」という言葉なのですが、
重要視されつつもよくわからないこの「義務」について簡単にご説明します!
「善管注意義務」は、民法で定められた「注意して取り扱う義務」です
まず「善管注意義務」ってなんなの? ということなんですが。
民法で定められている、簡単に言えば、
「最終的に引き渡す特定物(中古車・美術品・建物など)を扱う場合、引き渡すまでの間、その人の能力や立場から通常期待されるような注意をもって取り扱い、保存をしないといけない」
という「善良なる管理者として注意する義務」の略です。(民法400条)
ちょっとわかりにくい表現かもしれません。
具体的に例をあげてみましょう。
たとえば、あなたが中古車を買ったとします。
購入の契約手続きが住んで、数日後に引渡しが行われることになりました。
あなたは当然、
「中古車販売のお店の人は、車を引き渡すまでの間に壊れたり傷ついたりすることがないように、注意して扱ってくれるだろう」
と思うのではないでしょうか。
これが「通常期待されるような注意」です。
何も言われずとも勝手にそうするだろうと期待されているわけです。
不動産…賃貸アパートや賃貸マンション、貸家などを貸すオーナーさんも、
「普通は、借りている部屋のものを乱暴にあつかって壊したり、汚したりしないよね」
という期待をして部屋を貸す…つまり、部屋の管理を借主に任せます。
「善良なる管理者の注意をもって使用する義務を負う」…というようなことが契約書に書いてあるのは、こういうことです。
あまり専門的なことを言ったりしてもよくわからなくなってしまいますから、
不動産屋のスタッフである私は、
「借りているお部屋なのだから、自分の持ち物よりもさらに大事に使いましょうね、という意味ですよ」
というふうに、説明しています。
ものすごくかみ砕いた説明なので全部が合ってるとは言えませんが、おおむね、このような認識でいいんじゃないかと思っています。
もっと身近な例で言いますと、友達からマンガ本を借りたときに、
「自分の本なら、読みかけのとき開いて伏せて置いたりするけど、
借りた本は開きグセがつかないように、しおりを挟むようにする」
といったような、「自分の物としての取り扱い基準」で扱わない、ということが必要になってくるのです。
「借りた本も別に構わず伏せるし、ポテトチップ食べた手で触るけど???」
いう方は善管注意義務ができてないかもしれません…!
「友達はものすごく本を丁寧に扱っていて、それをあたりまえだと思っているかもしれない」
というような、借りているものの取り扱いにはちょっと想像力が必要になってきます。
「通常期待される」の「期待」って?具体的にやったほうがいいことチェック!
上記マンガ本の例のように、ものを大事にする度合というのは人それぞれです。
「通常期待される」部屋の取り扱いというのは、一体どんな程度のものなんでしょうか。
最低限これはおさえておいた方がいい!という部分を説明します。
■火の扱いに注意する・水の扱いに注意する
要するに火事を起こさないことです。
使わないときはガスの元栓を閉めたり、タバコなどの火の扱いには注意をしましょう。
また、水漏れを起こさないように水道の蛇口の閉め忘れなども注意しましょう。
■壊したり、傷つけたりしない
自分の意思で、例えばバットを振り回して壁やガラスを壊してまわった…なんていうのはもってのほかですが、
たまたま手が滑って傷つけてしまった、なんて場合も責任があります。
お子さんがいるご家庭なら、お子さんに落書きをさせたりしない、というようなことも含みます。
さきほど説明した中古車の例で言えば、「うっかりして壁にこすれちゃった」「目を離した隙に子どもがひっかき傷つけちゃった」なんてことあったら、うっかりなら仕方ないね、とはならないですよね。
賃貸住宅でも同じです。
■掃除をする
汚れは放置しておくとこびりついて落ちなくなってしまったり、
そこから腐食…カビやサビなどが広まって、建物や設備に大きなダメージを与える場合があります。
徹底的にどこもかしこもピカピカにしよう、という必要はありませんが、
「汚れたところは早めに掃除する」
「ゴミを溜めておかない」
「濡れたところを濡れっぱなしにしない(乾きにくい状況を作らない)」
といったことを気にしておくといいかと思います。
重要なのは「跡が残るような汚れにしない」ことです。
次の「通気・換気」にも通じますが、床にじかに布団を敷く方は敷きっぱなしの「万年床」にも注意です。
寝ている間は思いのほか汗をかき、その水分を吸収した布団はカビや床のシミを作る原因となります。
■通気・換気をする
ずっと部屋を閉め切っていると、部屋に湿気がたまって、結露でびちゃびちゃになったり、カビが発生します。
時々窓を開けて、押入れやクローゼットの扉も開けて風を通しましょう。
換気扇や除湿のための設備をつかうのもいいですね。
料理の時に換気扇を回さない、という人もたまにいるのですが、油汚れがこびりつくのでよくありません。
また、タバコを吸う人は特に換気には注意しましょう。(ヤニ汚れの他、臭いにも注意が必要です)
こちらの記事もご参照ください
■ものが壊れたり、状態がおかしかったら報告をする
うっかりなにか壊してしまった、というときはちゃんとオーナー・管理会社に報告しましょう。
また、お部屋の何かに異常が発生しているのに、それを放っておいてなにもしない、というのもよくありません。
例えば、換気扇が古くなって壊れていたけど、あまり気にしないから…と放っておいたとします。
しかし、換気扇が壊れているせいで充分な換気がされず、結露が起きやすくなって、カビが大量発生しました。
原因は換気扇が古くて壊れたせいで、入居者さんのせいではありませんが、
「換気扇が壊れたことを報告しなかったせいで起きた部屋の汚れ・損傷」は、入居者さんの「善管注意義務違反だ」とされることがあります。
なんかおかしいな、ということはちゃんと報告しましょう。
■用途外、負荷のかかる使用方法をしない。
例えば、カーテンレールにハンガーをかけるとか。
ハンガーポールで懸垂をするとか。ドアの枠で懸垂をするとか。
風呂場の浴槽で水生生物を飼育するとか。
壊れる原因になります。やめましょう。
また、「追い焚き機能のあるお風呂には使わないでください」と書いてある入浴剤を追い焚き機能のあるお風呂で使うなどといったように、
物件自体の設備の用途だけでなく、自分の家財・家電・消耗品等の使い方にも気を付けましょう。
「預かった」であることを忘れず使いましょう
「善管注意義務」という言葉自体は、
ちょっと乱暴に言うと、
「普通、一般的に、借りたものや他の人に渡す契約をしたものは、注意して取り扱うよね?」
というようなニュアンスが感じられ、
「一般的にこうするであろう」という期待を基準とするため、明確に「これはするべき、これはしなくてもいい」というのがあいまいです。
上で書いた「やったほうがいいこと」も、私が賃貸アパートなどの管理会社スタッフとして働いてきた上で、
「こういうことをしなかったから、部屋の状態があんまりよくないのだろうな」
という経験則にすぎません。
が、あいまいながらも、
逆に「これは生活してればどうしても起こる劣化や傷なので、責任にはならないよ」という部分については、
入居者さんの責任にならないようにするガイドラインや法整備が進んできています。
※参考 ▶「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について|国交省
なので、傷つけないよう注意しつつ、掃除や換気をある程度定期的にしておけば、責任を問われるということはさほど多くはないと思います。
「掃除や整理整頓が大の苦手だ!」という人には簡単ではないかもしれませんが、お金のことがかかっている問題です!
ちょっとだけ頑張ってみましょう!
尚、契約によっては上記のガイドラインを守ればそれでいい…というわけではない場合があります。
こちらのブログ記事もご参照ください。
▶高額な原状回復費用に「国交省ガイドライン」で対抗…する前に知っておきたい注意点!
善管注意義務というのは、「自分の物と同じように扱う」ということの、一段上の表現です。
賃貸住宅はあくまで借りているものであり、いつか返すものだ、ということを頭の中に置いておきましょう。
北海道恵庭市の不動産会社
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