法人に社宅として部屋を貸すときに注意しなければいけないことは?
賃貸住宅を経営管理していると、法人から「社宅として借りたい」とお問合せがくることもあります。
大きな企業さんであったりすると、家賃等の支払いについてはあまり心配しなくてよいのですが、いろいろとトラブルが発生することもあります。
法人との賃貸契約の手間
法人さんの規模などにもよりますが、法人との社宅契約は賃料滞納などの心配は少ないというのがメリットです。
また、大きな企業さんであれば、入居者を入れ替えながら長期的な契約をしてくれる可能性も高いですね。
しかし一方で契約には手間がかかります。
・会社の決裁などが必要なため、申込から契約までどうしても時間がかかる
というのは、時間の余裕をもって契約をすればいいですが、
・連帯保証人をつけることや、保証会社への加入を拒否される
といったケースが多く、法人の業績が落ちたり、大きな問題が起きた場合の保証が無くなってしまうことが懸念されます。
小さな企業さんであれば代表取締役の方に連帯保証人になっていただいたりすることも多いのですが、
大きな企業になればなるほど、代表の方には社宅のための契約書を確認して印鑑証明書を取得して判を押す、なんて暇はありません。
敷金を増やすなどして、一定の担保を設けるのが良いかもしれません。
入居後によくあるトラブル
さて、入居後についても心配な点があります。
社宅として部屋を貸すという場合、最大の問題は「入居者は契約者ではない」ということです。
学生さんの保護者による代理契約などでも同じことが言えますが、
保護者が子どもに私生活を指導しやすい立場なのと違って、
会社は社員の私生活を指導するような存在ではありません。
法人側がどのような対応をしているかは違いがあるかと思いますが、
契約内容を説明を受けることなく入居する人も多いでしょう。
契約前に内覧などをしているケースもほとんどありませんし、入居するまでオーナーや管理会社とまったく顔を合わせないことは少なくありません。
そうすると、どういうことが起きるかといいますと、
「賃貸契約を自分事として考えないで居住する」ことになります。
・部屋の扱いが雑、あるいは自己流の使い方で、汚したり傷つけたりする。
・居住や自治体のルールを守らず近隣に迷惑をかける。
・契約をよく把握していないために、ペット禁止物件でペットを飼育したり、許可を得ずに入居者を追加したりまた貸しする。
あくまで割合としてですが、直接契約書を交わしていない入居者さんがこういったトラブルを起こすことはよくあります。
法人の社宅に限らず、子どもの代わりに親が契約する場合や、
高齢の親の代わりに子どもが契約するといったケースでも同様です。
もちろん、すべての法人契約の入居者が問題行動をするわけでも、
個人で契約した方がそういったトラブルを起こさないというわけでもありませんが、
自分が選んだわけでもない部屋に会社側に指定されて、
契約書に名前を書いたわけでもなく、
家賃を全額負担しているわけでもない、という状態は、
「丁寧に扱おう」「気を付けて住もう」といった意識を低くしてしまいやすいようです。
賃貸住宅に限らず、契約の当事者にならずにサービスだけ享受する、というのはこうなりやすいのかもしれませんね。
また、契約者である法人側も「法人名義で契約しているのだから、実際住むのは誰だってかまわないだろう」と考えるケースが多々あり、
いつのまにか申込書に書かれた入居者と違う人が住んでいる、入居人数が違う、といったこともありえます。
入居者の情報はきちんと提出してもらいましょう!
こうした問題の対策の一つとしては、
「入居者を限定する」方法で、どんな人が入居するかをはっきりさせることです。
申込時に入居者がすでに決まっているのなら情報を提出してもらい、
その入居者以外が住んではいけない、
入居者の入れ替えがあるときは許可を取らなければならない、
入居者の身分証明書や住民票などもきちんと提出する、
といった契約を結ぶようにしましょう。
法人側に任せっぱなしで入居者のことをよく知らない、という状態はよくありません。
可能ならばその入居者さんに連帯保証人になってもらう、というのがベストかもしれませんね。
連帯保証人には極度額等の制限はありますが、基本的には借主同等の責任がありますし、契約書にも記名押印が必要です。
入居者さんが入れ替わるたびに、連帯保証人も変更しなければならないという手間はありますので、
そこまでは面倒だなあ…というのであれば、
入居にあたっての注意事項などを書いた使用細則のようなものに一筆、署名をいただくような形でも、多少は認識を改めてくれるかもしれません。
しかし、法人によっては上記のような「入居者を限定する」契約を望まない場合もあります。
まだ誰が入居するかも決まっていないけど、誰かは絶対使うから社宅を用意しておく…という場合です。
その場合でも、入居者が決まり次第情報は提出してもらいましょう。
何か起きたときに入居者に直接連絡がとれない、というのはシンプルに不便です。
また、不法滞在の外国人を勝手に住まわせるといったような、犯罪にかかわるような使用方法をされる可能性がゼロというわけではありません。
身分証明はきちんとしてもらいましょう。
学生さん向けに「親名義での契約」での注意事項をまとめた記事もありますので、
法人契約においても入居者様への注意事項としてよろしければご参照ください。
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大企業だからと安心してしまわないことが大切
オーナーさんの中には、
「大手の法人が社宅で借りるような案件があったら是非進めて」という方もいらっしゃいます。
しかし、法人に社宅として部屋を貸すにあたっては、
「この契約では入居者が契約内容を知らないまま入居してくるかもしれない」と思って、
契約とその後の賃貸管理をしていくことが大切です。
「知ってる名前の企業だから大丈夫!」と簡単に入居審査を通すのではなく、
きちんと内容の確認や契約内容の説明を行い、契約を結ぶようにしましょう!
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