遺産分割は10年以内に!ルールの見直しと法定相続した共有物の問題
不動産を相続するとき、法定相続だと権利が「共有」になることがあります。
分割協議をして具体的相続分にしようとしても決着がつかずに何年もずるずる…ということはよくありますが、
少しでも早く協議に決着をつけて貰おうと、ルールが見直されました。
遺産分割に関する新たなルールが施行されます
民法改正によって、令和5年4月1日より、相続制度(遺産分割)の見直しがなされます。
遡及効(法律の施行時点からさかのぼって効力を持つこと)があり、
令和5年4月1日の施行以前の相続にも適用されます。(猶予期間あり/施行日から5年間)
相続で実家を複数人が共有することになったら…
本来、親の遺産は兄弟姉妹等しく分割されることが前提となります。
これが法定相続による「法定相続分」となります。
法定相続についてはこちら↓
ただ、遺産には、お金など他の財産もありますし、土地とか建物って分けることが難しいですよね。
たとえば、父が亡くなってしまい、母と兄と妹が相続人で、実家を法定相続すると、
実家の土地と建物の所有権が父の名義から、
母2分の1、兄4分の1、妹4分の1の共有名義人となるわけです。
「共有物」に関しての法律も不動産に関わる変更がありますので、まずはそちらをご紹介いたします。
共有物の「変更」「管理」の現行ルール
さて、父が遺した不動産…実家を「母、兄、妹」が法定相続したとしましょう。
母2分の1、兄4分の1、妹4分の1の共有名義の状態です。
では、持分4分の1の妹は何ができるのでしょうか?
共有物に対して何かしたい場合、権利を持っている他の人たちの同意が必要な場合があります。
簡単な説明とはなりますが、
共有物の変更→共有者全員の同意
共有物の管理→共有者の過半数の同意
共有物の保存→共有者単独で可能
(令和4年11月時点の現行法)
おおまかにこのようなルールになっています。
要するに妹さん1人では、実家の補修(共有物の保存)しかすることができないんですね。
それでも3人が頻繁に連絡を取りあい、意思疎通ができる状況ならいいですが、
例えば誰かが入院して意思疎通が困難になったり、連絡を絶ってしまえば、「共有物の変更」は不可能に近くなります。
民法改正で、このルールが少し変わります。
共有物の「管理」の拡大・明確化
令和5年4月1日より、共有物の「管理」について拡大・明確化することとなります。
共有物の変更
共有物の管理(軽微な変更)
共有物の管理(今までの管理)
共有物の保存
今まで「管理」は一種類だけでしたが、二つに分かれました。
これまでは「変更」扱いで全員の同意が必要だったものの一部、
軽微な変更については「共有物の管理」となります。
共有物の軽微な変更ってなに?
軽微な変更は、
「形状又は効用の著しい変更を伴わないもの」
とされています。
形状の変更とは、その外観、構造等を変更することをいい、
効用の変更とは、その機能や用途を変更することをいいます。
たとえば、実家の駐車場の砂利舗装をアスファルト舗装に変更することや、
実家の建物の外壁をサイディング化することなどは軽微な変更と考えられます。
但し、共有物の管理については、今までどおり、持分の過半数が必要ですので、そこはお間違いになられないようご注意ください。
過半数とは半分を超えるということですので、兄と妹の2人では、4分の1足す4分の1で合計2分の1にしかなりませんので、過半数とはなりません。
新制度になったとしても、妹だけでは実家の補修しかすることができないということに変わりがないわけです。
遺産分割ってなに?
…このように、一つの土地や建物の権利を複数の人が持っている「共有物」の状態というのも色々と不便が多いものです。
なるべく一つのものは一人で所有できるようにしたいですから、
実家のうち、土地は兄、建物(母屋)は母、建物(離れ)は妹、現金は母、有価証券は兄、絵画等のコレクションは妹
なんて分割を協議することが一人っ子以外の場合、多々あります。
簡単にいうと、これが遺産分割で、それぞれの相続分を「具体的相続分」といいます。
その協議を遺産分割協議なんていうこともありますね。
「遺産分割に関する見直し」はどんな内容?
遺産分割ですが、スムーズにいくとは限りませんよね。それぞれ「想い」があるわけですから。
前述の例では、妹が「離れとコレクションだけ貰っても全然足りない!私が一番、父の療養看護をしたんだから!」なんて言うかもしれません。
そうすると、「相続」が「争族」「争続」になり、いつの間にか収拾がつかなくなるわけです。
たとえば、その間に母が亡くなった場合、またややこしくなりますよね。
たとえば、更に兄が亡くなり、兄には3人の子供がいた場合、その3人が相続人として加わるわけです。
たとえば、更に時間が経過し、妹も亡くなった場合、妹には2人の子供がいて、2人とも音信不通なんてこともザラにありますよね。
そうなると、実家(遺産分割)はもうどうすることもできません。
このように、相続が発生してから遺産分割がされないまま長期間放置されると、
相続が繰り返されて多数の相続人による遺産共有状態になってしまい、
遺産の管理・処分が困難となります。
また、「具体的相続分」は時間の経過とともに証拠等がなくなってしまい遺産分割の困難に拍車をかけるわけです。
そこで新ルールでは、被相続人の死亡から10年を経過した後にする遺産分割は、原則として、具体的相続分を考慮せず、法定相続分によるものとなります。
これは10年が経過すると、具体的相続分による分割の利益が喪失されるということになります。
…ちょっとわかりにくいですか?
簡単に言うと、「被相続人の死亡から10年以内に遺産分割協議を終わらせないと、法定相続と同じ分割方法をすることになる」
ということで、
本項冒頭での例をあげますと、「私が一番、父の療養看護をしたんだから」といった主張も、できなくなります。
実家も、3人で共有することになりますから、大きな変更をしたい場合は3人全員の同意が必要です。
「いつまでたっても相続が終わらない」状態を解消したい、という目的の法改正です。
冒頭でも述べましたが、施行は令和5年4月1日で、更に遡及効がありますので、施行日以前の相続の場合でも適用されます。(施行から5年間の猶予期間あり)
この新ルールの遡及効ですが、
・令和5年4月1日以降の相続は相続開始から10年経過で適用
・令和5年4月1日以前の相続は
a)相続開始から10年経過する日が5年間の猶予期間内の場合は猶予期間が終わる日
b)相続開始から10年経過する日が5年間の猶予期間を超える場合はその日となります。
施行前の相続にも適用されるため、今まさに遺産分割協議中の場合は、早めに遺産分割に決着をつけることが望ましいですね。
最後に、この新ルールは「原則として」となってます。なので例外処置もありますので、お間違いのないようご注意ください。
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