遺贈~遺産の有効活用~
例えば「あの福祉団体に、自分の遺産を使って貰いたいな」
「この品物は、価値の分かる共通の趣味の友人に渡したいな」
などの、自分の遺産についての希望がある場合は、
「遺贈」の準備も必要かもしれません。
遺贈という選択肢、知っていますか?
自分の遺産の行き先を考えた時に、「相続」以外の選択肢があるのはご存知でしょうか?
自分の死後、遺産を有効に使ってもらいたい。
地域や社会に役立ててもらいたい。
と思う人は少なくはないでしょう。
これが「遺贈」です。
・この人には生前たくさんお世話になったからお礼をしたい。
これも「遺贈」です。
・自分の亡き後、妻や子供たちのために役立てたい、残したい。
これは「相続」ですから「遺贈」ではありません。
相続人のいない遺産が年間647億円(2021年)、国庫に帰属しています。
しかし、これは「手間、暇、カネ」のかからない優秀な遺産だけです。
行き先のない遺産がこの世の中に彷徨ってます。
所有者不明土地だけでも国土の22%、九州よりも広くあるわけです。
ご自身の「遺産」を彷徨わせることなく、世のため、人のために使うには「遺贈」は選択肢となります。
でも、遺贈って相続と何が違っているんでしょうか?
どう準備すればいいのでしょうか?
贈与と譲渡の違い
「遺贈」は「贈与」の一種です。
まずは「相続」と「遺贈」の違いの前に、
「贈与」と「譲渡」の違いについてみてみましょう。
簡単にいうと、
「贈与」無償・対価なし
「譲渡」有償・対価あり
となります。
相手は親族でも他人でも関係ありません。
「無償譲渡」というのは法律上は「贈与」になります。
相続と遺贈の違い
続いて、「相続」と「遺贈」の違いについてですが、
「相続」とは、亡くなられた方の財産を法定相続人が引き継ぐことです。
「遺贈」とは、亡くなられた方の財産を遺言によって無償で譲ることです。
遺贈の場合は、譲る相手は誰でも可能です。(他人でも法定相続人でも法人でも)
逆に言えば、「相続」ができる人というのは限られています。
「相続」の対象になる範囲は?
財産を誰かに残したい!という場合に、「相続」によって行えるのは一体どの程度の範囲なのか、ご存知でしょうか?
詳しくは国税庁のHPなどでも掲載されていますが、
簡単にご説明させていただきます。
必ず配偶者は相続人の地位となります。
配偶者以外の人は、
第1順位 子(死亡している場合は孫)
第2順位 親
第3順位 兄弟姉妹(死亡している場合は甥・姪)
の順位で相続人となります。
内縁の妻、離婚した元配偶者、養子縁組していない連れ子、従兄弟、叔父叔母は相続人には原則なれません。
この他の人や、上記で挙げた相続人になれない人が相続をするケースとして、
特別縁故者 というものがあります。
特別縁故者 は、
亡くなった方に法定相続人がいない場合に特別に相続を受ける権利を持つ人のこと。
特別親しい関係をあったことを理由に遺産の全部または一部を相続することができます。
これは裁判所に申立し認められる必要がありますので簡単ではありません。
生計を同じくしていた内縁の妻、養子、養親、子の配偶者、献身的に介護を行なった人(仕事として行なった場合は除く)、生前財産を譲りたいと言っていた相手などが可能性としてはありますが、
裁判所が特別縁故者として認めるか否か、その分与額がいくらになるかは全くわかりません。弁護士に依頼すると弁護士費用もかかります。
残(遺)したい人に残(遺)すには、遺言による遺贈が最大の対策となることは明らかです。
遺贈をするためには
では、遺贈をしたい相手がいるのであれば、手続きはどうしたらいいか簡単に紹介しましょう。
遺贈の流れ
・財産目録の作成(遺産(財産)の棚卸し)
↓
・遺贈したい「人」「寄付先」を決める
↓
・遺産の配分を決める
↓
・遺言執行者を指定する
↓
・遺言書を書く
遺贈は受けてる側(受遺者)が拒否することもできるので、
事前に相手に伝え、合意を得ることも必要かもしれませんね。
また、死亡後に遺贈の手続きを一任できる遺言執行者も決めておいた方が良いです。
これは第三者でも構いませんし、受遺者にすることも可能です。
むしろ、受遺者にすると手続きをスムーズに行うことができます。(特定遺贈のメリット参照)
借金も遺贈できる?される?
遺贈の内容(種類)によっては、負債も引き継ぐことになります。
遺贈には大きく分けて「包括遺贈」と「特定遺贈」があり、
包括遺贈の場合は、負債も遺贈する場合があるので注意が必要です。
◆包括遺贈
特定の遺産(財産)を指定せず、受け渡す遺産の「割合」のみを指定する方法です。
たとえば「遺産の2分の1を遺贈する」「遺産を全部遺贈する」などと遺言書に書き残し、特定の財産については指定しません。
包括遺贈を受けた人を「包括受遺者」といいます。
・メリット
包括遺贈の場合、遺産を特定しないので遺言書作成後に財産に変動があった場合にも対応可能です。
・デメリット
遺贈を受けた人は負債もその割合で受け継ぐことになります。
また、他に相続人がいる場合は、遺贈の割合しか決まらないので、具体的にどの遺産を受け継ぐのかについて、話し合いをして決めなければなりません。
そのため、トラブルが発生する可能性があります。
◆特定遺贈
遺言者が受け渡す遺産(財産)を特定する遺贈方法です。
たとえば「○○銀行○○支店の預貯金を遺贈する」「○○の不動産を遺贈する」など財産を具体的に指定(特定)します。
特定遺贈を受けた人を「特定受遺者」といいます。
・メリット
受遺者は負債を受け継ぎません。
また、他の相続人と話し合う必要もなく、すぐに指定された遺産を受け継いで自分のものにすることができます。
たとえば不動産を特定遺贈された場合、受遺者は速やかに相続登記の手続きをすることができます。
ここで大事なのが「遺言執行者」です。
たとえば不動産の場合は登記をするわけですが、単独で移転登記手続はできません。
相続人全員または遺言執行者との共同申請になるのです。
なので、「遺言執行者」を遺贈者に指定しておくとスムーズに進みやすくなるのです。
・デメリット
遺言時に特定した遺産(たとえば不動産)が死亡時までに失われていたら、
遺贈の意味がなくなってしまいます。
不動産は遺贈できる?有効活用できる?
これにつきましては、「つづき」として今後アップいたします。
むしろ、ここからが不動産の窓口の本職となります。
記事のご用意ができましたらこちらにリンクも貼りますのでお待ちください。
・・・
最近、「遺贈」承りますというCMなどをよく見かけませんか。
ここで求められている「遺贈」は主として現金です。
不動産の場合だと「宅地建物取引業法」に抵触する可能性もでてきますしね。
不動産を遺贈として寄付できる非営利団体はとても少ないです。
不動産の場合は、売却して現金で寄付または遺贈寄付することを求めているところが多いです。
これだと、ただの不動産売却・処分になってしまいますね。
不動産の遺贈を考える場合、まずは、寄付先の団体が不動産の遺贈を受け付けているかの確認が必要です。
前述しましたが、遺贈は拒否することもできるので、
確認しないまま遺言書に「不動産を遺贈する」と遺しても、不動産を受け付けていない団体の場合は、
遺贈を放棄され、せっかくの善意も有活活用もされることなく、遺産が彷徨ってしまう可能性があります。
不動産の遺贈に関するご相談もお受けしています!
不動産の相続、不動産の遺贈については、不動産のプロにご相談ください。
不動産の窓口は不動産のプロです。
不動産の相続、不動産の遺贈についてのご相談は、不動産の窓口(恵庭)までお気軽にご相談ください。
関連した記事を読む
- 2024/01/09
- 2023/12/20
- 2023/11/27
- 2023/11/17