高齢者の賃貸住宅事情~高齢者入居リスクの通説と実状、見落としがちなメリット~
高齢者の賃貸入居が断られる、という話題が後を絶ちません。
TV番組などでも特集が組まれてはいますが、
実情が一般の方に、あるいは賃貸住宅を所有するオーナーさんたちに理解されているとは言い難い状況です。
高齢者の賃貸物件への入居は難しい?
先日、羽鳥慎一モーニングショーで、「深刻 高齢者の住宅事情」という内容の放送がされてました。
放送された概要
アンケート①
年齢を理由に賃貸住宅への入居を断られた経験のある高齢者
年収200万円未満 27.7%
年収200万円以上 26.4%
番組では、このアンケートから分かることとして、年収の問題ではないということを述べておりました。
また、高齢者(65歳以上)の4人に1人以上が断られたことがあるという結果が伝えられました。
ただ、このアンケートから年収の問題ではないと番組で言い切るのは無理がありますね。
たとえば、このアンケートに年収300万円以上を加えるとかでなければ、年収の問題ではないとは言い切れませんね、都内でのアンケートですから。
事例①
・杉並区一人暮らし、69歳の女性の場合。
不動産会社を数軒訪れたが、店舗に入ると年齢を聞かれ、希望条件も何も聞かれないまま断られたとのこと。
事例②
・都内一人暮らし、持ち家、年金暮らしの70歳男性。
息子(40代)が近くに住んで欲しいと希望したため家探し。
保証人にあたる息子は開業医。
不動産会社が1週間に50件以上の物件をあたり、入居先が決まるまで3ヶ月かかったとのこと。
アンケート②
高齢者に物件を貸すことに拒否感がある→70%
アンケート③
不動産会社が断る理由
・高齢者の入居後「トラブルがあった」57.3%
1位 孤独死による事故物件化
2位 家賃滞納
3位 死後の残地物の処理
家賃滞納の事例
70代女性、身寄りなし、年金暮らし。
約30年間家賃の遅れなど一切なかったが、突然、半年間家賃を滞納。
認知症を発症し、家賃を払ったかどうか分からなくなっていた。
退去し老人ホームへ。
・・・
番組では、孤独死は1番多いのは40代男性であって高齢者だから孤独死が多いわけではない(某コメンテーター)、
空き家が増えてるんだから行政が介入して
シェアハウスなどに住宅確保要配慮者(低額所得者、被災者、高齢者、障害者、子育て世代など)をあてれば良い、
公営住宅をもっと有効活用すべきだ、
孤独死は告知義務がないのだから、そういったことをもっと不動産会社に浸透させなければならない、
などのコメントがありましたが…少し違いますね。
まず、
告知義務不要についてですが、裁判事例なども考慮してつくられた国土交通省のガイドラインです。
不動産会社の直轄省庁のガイドラインですので、不動産会社はほぼほぼ100%は知ってると思いますよ。
▶国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」
番組では、孤独死の告知義務がないから、高齢者の入居を阻害するものはない、
みたいな言い方でしたが… これもちょっと違うのではないでしょうか。
孤独死によって発生する問題は次の入居者が決まらないことだけ、というわけではありませんし、
告知義務不要だから入居審査OKだとかNGだとかではないですよね。
孤独死の半分は高齢者未満世代
前述のアンケート
・高齢者の入居後「トラブルがあった」57.3%
1位 孤独死による事故物件化
2位 家賃滞納
3位 死後の残地物の処理
視野をここだけで見れば、このアンケートに間違いはありませんが…少し限定し過ぎですね。
これらの情報だけでは、「高齢者が入居することでトラブルがよく発生する」と勘違いしてしまいます。
こういった先入観が、アンケート②の「高齢者に物件を貸すことに拒否感がある→70%」に繋がっているのではないでしょうか。
たとえば、
このアンケートを「入居後にトラブルがあった世代は?」にした場合、どうなるでしょうか?
高齢者世代がトラブルの57%にもなるでしょうか?
若者でも、中年世代でもトラブルは発生しますし、高齢者世代ばかりが入居後トラブルが多いと言えるのでしょうか?
さらには、番組で提示された情報も、
番組では「孤独死は1番多いのは40代男性であって高齢者だから孤独死が多いわけではないとの」コメンテーターの言葉がありましたが、
孤独死で1番多いのは60代です。
孤独死の世代別では、40代の約10%に対して60代は約30%ですので、
孤独死全体での割合で言えば40代の約3倍となります。(孤独死現状レポート/日本少額短期保険協会/2022年11月)
過去に単身世帯が40代男性が1番多かったことや、
自殺者が40代男性が1番多かったってことはありますが、
孤独死が40代男性が1番多いという調査結果は聞いたことがありません。
しかし、これらの情報を「結局、高齢者の孤独死が多いんじゃないか」と単純にとらえるべきではありません。
確かに、孤独死で1番多い世代は60代で全世代の30%を占めています。
ただ、同レポートでは、65歳未満の孤独死が全体の50%(2022年レポート49.4%、2021年レポート52%)を占めていることが報告されております。
これは、高齢者の孤独死が特別多いわけではなく、孤独死の半分は高齢者未満であるということです。(高齢者は通常65歳以上を指します)
>高齢者に到達しない年齢で亡くなっている人の割合はおよそ半数にのぼっている。
>孤独死全体の40%が現役世代の方の死であり、孤独死は決して高齢者特有の問題ではなく、全世代にわたる大きな問題である。
と、同レポートでも述べられています。
こういった事実を大家さんや管理会社さんは理解しなければなりません。
高齢者の入居は歓迎すべきである
高齢者の入居後トラブルのアンケートの2位には「家賃滞納」が挙げられていましたが、
家賃滞納は高齢者が1番多いのでしょうか?
東京大学空間科学研究センター(2020)の研究では、世帯主の世代別の家賃滞納率は、20歳未満が圧倒的に高く、60歳以上が全世代別で1番低くなっています。
また、世代別の入居期間はどうなっているでしょうか?
高齢者世代は6年以上の入居期間が約63%、4年以上の入居期間は85%で、他の世代に比べて圧倒的に長期間の入居となっています。
アンケートにあった「孤独死による事故物件化」「家賃滞納」「死後の残地物の処理」、
保険などでリスクヘッジはできないのでしょうか?
賃貸時の住宅総合保険や家賃保証会社の保障(保証)の範囲に、孤独死等に対する備えがあるものが各社から出ております。
高齢者の入居には、このようにメリットも多数存在します。
各種公共・民間のサービスや、推定相続人の方などと連携をとることで、
多くの賃貸オーナーさんが抱いている不安は解消できるはずです。
恵庭市のアパート管理は不動産の窓口にお任せください
不動産の窓口(恵庭)の管理物件には、高齢者の入居を拒む物件はありません。(但し、全世代共通の入居審査はございます)
高齢者の入居困難という社会問題解決のための一翼を担いたいという大家さんは、不動産の窓口(恵庭)の賃貸物件管理にお任せください。
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